薬剤師が教える『桂枝加芍薬大黄湯』
目次:
桂枝加芍薬大黄湯(けいしかしゃくやくだいおうとう)
1. 成分
- 芍薬 6.0g
- 桂皮 4.0g
- 大棗 4.0g
- 甘草 2.0g
- 大黄 2.0g
- 生姜 1.0g
芍薬(しゃくやく)
ボタン科のシャクヤクの根を乾燥させたもの。
主要成分はペオニフロリン。
主な薬効は、収れん、鎮痙、鎮痛作用があります。
また抗炎症作用、平滑筋弛緩作用があります。
血の巡りを良くする生薬の代表です。
冷え性や婦人病に用いられる漢方薬によく配合されます。
桂皮(けいひ)
クスノキ科ニッケイの樹皮または周皮の一部を除いたもの。
主要成分は、ケイヒアルデヒド。
主な薬効は、発汗作用、解熱作用、鎮痛作用があります。
漢方では、風邪薬、鎮痛・鎮痙薬、解熱、鎮痛、消炎薬、婦人薬に用いられています。
気の巡りを整え、発汗によって体表の毒を除く働きがあります。
大棗(たいそう)
クロウメモドキ科のナツメの果実。
主要成分は、ジジフスサポニン。
主な薬効は抗補体作用があります。
漢方では、通経、利尿、関節炎や腰痛に用いられています。
料理にも用いられて、胃腸の機能を整えたり、精神を安定させ、筋肉の緊張による疼痛や腹痛などの痛みを和らげる働きもあります。
多くの漢方薬に配合されています。
甘草(かんぞう)
マメ科のカンゾウの根や根茎を乾燥させたもの。
主要成分は、グリチルリチン。
主な薬効は、去痰作用・鎮咳作用・消化性潰瘍薬があります。
様々な生薬の働きを調和させる目的で使われることが多い生薬です。
疼痛緩和、緊張を緩める働きもあります。
甘草は名前の通り、根が「甘い」草です。
成分のグリチルリチンは、砂糖の約200倍の甘みがあり、ごく少量でも甘味料として役立っています。
分子構造が副腎皮質ホルモン(アルドステロン)と似ているため、抗炎症・抗アレルギー作用をもちます。
長期に大量に服用すると、低カリウム血症などの副作用が出る可能性があります。
1日に甘草を2.5g以上服用使用すると副作用が現れやすくなるので、甘草が含まれている漢方薬の併用には注意が必要です。
大黄(だいおう)
タデ科のダイオウの根茎を乾燥させたもの。
主要成分は、センノシド。
主な薬効は、緩下、駆瘀血(血の滞りを改善する)作用があります。
漢方では、多くの処方に配合され、重要な生薬とみなされているため、「将軍」という別名がついています。
大黄を含む処方軍を「大黄剤」といい、大黄甘草湯をはじめとして、大柴胡湯、三黄瀉心湯、大承気湯、桃核承気湯、通導散、潤腸湯、乙字湯、桂枝加芍薬大黄湯などがあります。
生姜(しょうきょう)
ショウガの根茎。
主要成分は、ジンゲロール。
主な薬効は、健胃作用、矯味作用があります。
漢方では、健胃作用として用いられたり、独特の臭いで矯味作用として用いられたりしています。
生姜は昔から広く料理や薬用に用いられてきました。
生姜を料理に使えば、肉や魚の臭い消しや、殺菌作用に役立ちます。
また、風邪の引き始めや冷え性、食欲不振の時に、すりおろした生姜をはちみつや黒砂糖と一緒にお湯に溶かして飲むなど、民間薬として用いられてきました。
2. 適応
- 腹部膨満感
- 腹痛
- 常習的な便秘
- しぶり腹
- 過度の緊張などの精神的ストレスによっておこる便秘型の過敏性腸症候群
3. 正しい飲み方・用法・用量
成人の場合、1日7.5gを2〜3回に分けて食前または食間に服用します。
水よりもお湯で服用すると良いでしょう。
症状によって、量は増減可能です。
4. 便秘・腹部膨満感への効果と注意点
桂枝加芍薬大黄湯は名前の通り、桂枝加芍薬湯に大黄を加えた処方です。
桂枝加芍薬湯が、過敏性腸症候群の代表的な処方で、特に下痢型に効果が強い漢方薬に対し、桂枝加芍薬大黄湯は、配合生薬に大黄が加えられていることから、過敏性腸症候群の便秘型に特に効果があります。
精神的ストレスによって起こる便秘症状によく用いられています。
また、配合生薬の「芍薬」によって鎮静、鎮痛、抗痙攣作用が働き、「桂皮」や「生姜」による血行促進、体を温める効果、そして「大棗」「甘草」による緊張を緩和し痛みを和らげる作用の相乗効果で腸の過剰な運動や緊張を抑えるため、腹部膨満感にも効果を発揮します。
便秘ではない人や下痢症状の人が服用すると、下痢がひどくなる場合があるため使用はできません。
また、妊娠している人は服用できません。
5. 桂枝加芍薬大黄湯が向いている人
- 体力は中くらいの人
- 常習的な便秘の人
- 腹部膨満感がある人
- 過敏性腸症候群の便秘型の人
6. 桂枝加芍薬大黄湯の副作用
桂枝加芍薬大黄湯に含まれている甘草は、利尿剤やグリチルリチン製剤を服用中の人が服用すると、偽アルドステロン症(脱力感、浮腫、低カリウム血症など)を起こす可能性があります。
大黄甘草湯を服用して、顔が浮腫んだり、体がだるいと感じたら服用を中止して医療機関に受診してください。
また、大黄には、子宮筋収縮作用があるとされています。
場合によって胃は、胎児に影響を及ぼす可能性があるため、妊娠中の人は服用しない方が良いでしょう。
また、授乳中の人が服用すると、大黄の成分が母乳中に移行して、乳児が下痢をする可能性があります。
授乳中の人が飲む場合は、服用する期間は授乳をお休みして粉ミルクにするか、授乳のタイミングと漢方を服用するタイミングをずらすと良いでしょう。
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